「音楽教育では、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」といった「階名(かいめい)」を使いますね。この階名の運用には、大きく分けて 「移動ド」「固定ド」 の2つのシステムがあります。

移動ドとは?

移動ド(Movable Do) では、「ド」は常に**その調(スケール)の主音(トニック)**を指します。

つまり「ド」はキーによって変わります。

  • ハ長調(Cメジャー):Cがド
  • ト長調(Gメジャー):Gがド
  • ヘ長調(Fメジャー):Fがド

このシステムは、どんなキーでも同じ階名で歌えるようにすることで、相対音感の育成や、移調・読譜トレーニングに非常に効果的です。

固定ドとは?

固定ド(Fixed Do) では、階名が常に特定の音名に固定されています。

  • Cは必ずド
  • Dはレ
  • Eはミ …という具合です。

これは、フランス、イタリア、日本などで広く使われている方式で、絶対音感の育成や、クラシック音楽の読譜に適しています。

音名と階名の違い

ここで大切なのは、「音名」と「階名」の違いです。

  • 音名(note name):C, D, E など。絶対的な音の名前で、どのキーでも変わりません。
  • 階名(solfège syllable):ド、レ、ミ など。スケール内での位置を表し、キーによって変化します。

つまり、ハ長調ではCがドですが、ト長調ではGがドになります。

シャープやフラットはどうするの?

移動ドでは、シャープやフラットの音を表すために変化した階名(変化音節)を使います。

例:

  • ド → ディ(Di)/ラ(Ra)
  • レ → リ(Ri)/メ(Me)
  • ソ → シ(Si)/レ(Le)

このように階名を拡張することで、調性の中にいながら半音階の変化も対応できます。

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なぜ移動ドを使うの?

移動ドは、音感教育やソルフェージュ教育の現場で非常に効果的です。

特に「コダーイ・メソッド」などの教育法では、移動ドが基本として使われており、

  • 内的聴覚の強化
  • 音程感覚の習得
  • 読譜・移調力の向上

といった効果が期待できます。

まとめ: 2つのシステムの違い

比較項目移動ド固定ド
「ド」の意味調の主音常にC
調によって変化✅ 変わる❌ 変わらない
重視する能力相対音感絶対音感
使用国・場面アメリカ・イギリス・教育現場フランス・イタリア・日本・クラシック音楽

「移動ド」イヤートレーニング動画